—— 物語
なぜ、わたしは越後の古社へ
通いつづけるのか
——ずっと、人の暮らしのそばに立っていました。
新潟の街で、便利屋として働いていた10年。電球を替え、家具を運び、庭の草を刈りながら、わたしは1,000軒を超えるお宅にお邪魔してきました。
家のなかに入ると、不思議とみなさん話してくれるのです。誰にも言えなかったこと。うまくいかない毎日。それでも、明日をどう生きていくかということ。
ある日、気づきました。
人は「家の片づけ」より先に、
「心の片づけ」を求めている、と。
迷ったとき、わたしはいつも越後の古社へ足を運びました。二千年以上この地を見守ってきたお社に手を合わせ、おみくじを引く。そこに現れた一枚の言葉に、幾度も救われてきました。
だから、思ったのです。
「あなたの代わりに、
わたしが神社へ行こう」と。
あなたの名前を心に携えて参拝し、あなたのためのおみくじを引いてくる。そこに、わたしから祈りのひと言を添えて、お届けする。
「運勢を占う」ためにおみくじを引くのではありません。神さまが授けてくださる言葉と、自分の人生を重ねるために、人は昔から、おみくじを引いてきたのではないでしょうか。
わたしが引いた一枚が、誰かの次の一歩になる。
そんなしごとを、静かに続けていきたいと思っています。
——阿部権八(ごんぱち)